浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

読書

九鬼周造 随筆集に関して

九鬼周造は、学生時代読んだ「いきの構造」で知った。いきの構造はそれ自体完成された論文であり、具体例を挙げて日本文化の根底を成す「いき」について記述し、かつ具体例に溺れない理論があると感じていた。今回随筆を読んでみる気持ちになったのには、先…

平家物語 古川日出男版

生き生きとした文体に驚く。祇王祇女仏とじのところなどは、源氏物語の鈴虫を思いだす。これを読んでいたら原文にも当たりたくなる。学生の時にこれを読めていたら違ったなと思う。平家物語はなにかを失うのが怖いとき、どうせいつかすべて失うのだと悲しく…

平熱の京都 鷲田清一

疲れてたかぶってる脳を休めたくて、本屋に入って文庫を買う。鷲田清一の「平熱の京都」一気に気分は京都の界隈をふらふらふわふわ散歩してるように。なめらかな日本語がすらすらっと頭に入ってくる心地よさ。よそ行き他人顔となんだか憎めない顔両方で京都…

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル、読了。運命には、意表を突かれた。そうして僕らが生まれたのだとしたら、死ぬときもやはりそんなものなのかもしれない。つまり、うっかりとか、思ってないとか。アイトールベラスコの新しい妻、では、スクールカーストという閉鎖的な空間で…

虞美人草を読んで 夏目漱石

道義と一個人としての利益。人間の信頼・信用とは一体何かという古く新しい問いに立ち戻らせてくれる小説である。他人に対して、信じられない行いをしたものは、その後も人に対する疑念がぬぐい去れない。自らを鏡のように転写するのが常人であるからである…

心葉 ―平安の美を語る― に関して

白畑よしさんと志村ふくみさんの対談をまとめた心葉という本を読んだ。表題の心葉という言葉を、寡聞にして知らなかったが、この本を通じて、平安貴族の繊細な美の感覚の一端に触れられたように思う。心葉とは、贈答の際に品物につけた草花や造花のこと。平…

岡倉天心 茶の本 第五章 芸術鑑賞 より

岡倉天心の著した茶の本から、美に関して考えさせられる記載があったので、記録しておきたい。岡倉は、「美術の鑑賞力は、修養によって増大することができるものである」としているが、「われわれは万有のなかに自分の姿を見るに過ぎないのである」とも述べ…

シーシュポスの神話

学生時代、教授に読むべきと薦められたものの、他のことにかまけて、放置してしまった一冊。手に取ってみると、シーシュポスの神話自体は、8ページほどの短編だった。 読後の感想。 不条理な世界に対して、自らの意志でもって、「それでよしと」と言い続ける…

芝不器男

あなたなる夜雨の葛のあなたかな 白藤や揺りやみしかばうすみどり夜、入浴中などに、しとしと雨が降ってくると、芝不器男の句がふっと思い出される。向こうの向こうに思い出されるのは故郷なのかあの人の横顔なのかなと思ったりする。白藤の句は、一昨年、藤…

夏目漱石 こころ

学生時代に夏目漱石のこころを読んだ。先日、紀伊國屋でこころの新装判を見かけて、読みたくなった。この装丁は、新潮プレミアム判というので、よくある退屈な(失礼)水彩イラストではなく、真っ白なカバーにメタリックグリーンの押箔で題字が印刷されてる。…

夏目漱石の俳句

仏性は白桔梗にこそあらめ。 これは、夏目漱石の俳句。 確かに、桔梗、特に白いものは、凛として他のものに犯されがたい魅力があるように思う。仏そのものの化身としては、一番桔梗が相応しいように思える。 他に、これも漱石の句で、秋の川真白な石を拾いけ…

綺堂むかし語り

今、岡本綺堂のむかし語りというのを読んでる。県立図書館が、蔵書を見せてくれるようになったので、足を運んだ時に、偶然見つけた。 明治10~30年頃のことが、鮮やかによみがえる感じがする。世の中はもっと大らかだったろうし、もっと刹那的だったんだろう…

澁澤龍彦全集21私のプリニウス読了

プリニウスを読んでから、澁澤龍彦の「私のプリニウス」をまだ読んでなかったことを思い出して、手に取った。プリニウスの知ったことをなんでも書き留めておこうとする好奇心の強さ、とりあえず見たこと聞いたことはなんでも大切にして、その精神と熱量には…

川端康成随筆集

川端康成随筆集を読んだ。きっかけは、ドナルド・キーン氏の特集で、「美しい日本の私」に関する言及があったから。 美しい日本の私については、言うべくもなく、日本の美について、万葉集から茶道や石庭に至るまで、その根底に通じている美というものに対す…

三四郎 読了

読売歌壇を読んでいたら、三四郎を扱った作品が掲載されてたので、いい機会だと思い読んでみた。本が手元になかったので、青空文庫で気楽に読んでみた。三四郎は熊本から上京きたばかりの大学生。明治が舞台だけど、人の心は今と変わらずなんだなと思い、す…

プリニウス 1~3巻

プリニウス (1) (バンチコミックス45プレミアム) 作者: ヤマザキマリ,とり・みき 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/07/09 メディア: コミック この商品を含むブログ (23件) を見る プリニウス、1~3巻読みました。 プリニウスのように、博覧強記、いつ…

惡の華 読了

惡の華 コミック 全11巻完結セット (少年マガジンコミックス)作者: 押見修造出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/06/01メディア: コミックこの商品を含むブログを見る押見修造さんの惡の華を読み終わった。 数年前、この作品がとっても好きで、一時期はどっ…