浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

雑文

贅沢な石

贅沢品とは本質的に余分なものだ。あってもなくてもかまわないものだけれど、あると持ち主が幸せになれる。私は無駄なものが好きだ。そこから何も受け取れないものが。 受け取ろうとした瞬間からそれは生産的なものになってしまうから。贅沢品はただそこにあ…

廃墟を愛す理由

廃墟が好きでいくつも見て来た。廃墟の中でも最も切なく悲しいのは、やはりラブホテルだと思う。ラブホテルが廃墟になる姿を見ると、全て物事は浮世の短い一瞬であるとしみじみ思う。生きるということは全く儚いと思う。人を愛しいと思う気持ちも、永遠とい…

手痛い批評

誰彼の面白い話なんぞいうのはもういい 聞きあきた 誰かを微笑ませたい? そんな欲をもつ者は地に落ちればよい 聞きたいのは如何にしてあなたが生きているのか あなたが心を踊らせるなにかであって 操作的な自己顕示的な偽善のようなものではない 短く言葉に…

私信(と言っても読んでもらえることはない)

あなたが遺したテキストを今ごろになって読んでます。あの頃は、あなたを好きだと言いながら、あなたの文章を真剣に読んではいなかった。そう今は痛感します。あなたが好きな詩を私も好きだということが、ただ嬉しかった。あなたが選ぶ言葉一つ一つが、輝い…

リハビリテーション

言葉が出てこなくて焦ることはないですか。 私はある。表現したいのに、言葉に詰まる。どのようにしたら、この感じを伝えられるのかと、迷い悩む。 10代のころ、言葉が溢れて困った。結果、たくさん書き、たくさん話し、していたように思う。20代、言葉は落…

山姫に

山姫にちへの錦をたむけても散るもみぢ葉をいかでとどめむこの藤原顕輔のうたがぴったりくるほど、気前よくさらさらと散り落ちる紅葉。 燃え立つような赤と輝くような黄と。 どうあがいても散ってしまうものは留めようがなく。儚く抗いようがないことは、や…

サンタマリアノヴエッラの香水

007でボンドガールがつけてたザクロの香りで印象的なサンタマリアノヴエッラ。 イタリアにある本店は薬店であり、歴史ある建物と聞く。 サンタマリアノヴエッラの香水は全て天然素材でできているということ。 ここだけ小宇宙とでもいいたげな、ゴージャスな…

特別な何か

あの頃あんなにもたくさんの言葉を投げ掛けてくれていたのは、私に特別な関心をよせていてくれたからですか。それともあなたの自己確認だったのですか。会うとほとんど話さないけど、色彩に溢れたあなたの言葉が好きで、発想や、知ってるもの、全部好きだっ…

意外なものを堀当てる

雑談しててその人もこっちも思ってないようなことを偶然堀当ててしまい、沈黙。 話すって、怖い。 そんで黙ってしまうってのが、また怖い。 本当になってしまうから。 自分の当たり前と、その人の当たり前の間には深くて長い河があり、前提条件が違うにも関…

わかられること

わかられることを拒否したようなものが好き。そんな人が好き。 だけど、そんな人は人に興味なんかないので、私の思いは一方通行のままだ。 わかられたいと思いが溢れているのを見ると、嫌でたまらないと思う自分は残忍なのか。 美しいすれ違いが永遠に続いて…

すぐに忘れてしまう

いいことも悪かったことも 君がそばにいたこと 笑ったこと泣いたこと 思い出すってことはさ もうそこにないってことだし もう何か決定的に他のものが付け加わってるってことだろ あのときを瞬間冷凍で あの色を鮮明なカラープリントで できない僕らはすぐに…

ここに何か書きたいのは

たぶん逃げ。逃避。桃源郷を求めての空中永久飛行みたいなもの。美しいものを探し求めて、思わずあとをつけてしまうような。あとをつけてるって、気がつかれないまま、ただ美しいものを盗み見て、満足するってどうなんだろう。いやそれこそ美しいものに対す…

青海波

世界中の全ての要素がわたしの目や皮膚や神経から入ってきて わたしをやさしく強く揺さぶったり傷つけたりする あなたが揺れるとその波紋が伝わって優しく強くわたしを揺さぶるのです

消えてなくなる

明日のはなしばっかりするって言われて、はっとする。今ここにいる自分なんてないみたいに、明日のはなし、昨日のはなし、ずっと昔のはなし、そんなのばっかり、と言われてるみたいで。 今が全てであとはなんもないんだよって、言われた気がして。蛍がすいっ…

あくがれいずるたましい

美しすぎれば美しすぎるほど、透明であればあるほど、花の盛りであればあるほど、それを目に留めるのは、一瞬にしておきたい。目の端に現れてすぐに消えて行く幻のようであってほしい。もっと目に焼き付けておきたかったと、しっかり見て、なくさないでいら…

あこがれ

誰でも同じとか、誰でもいいとは、決して思えない。人には、そう言う。誰でも同じとか。でも、私のかけた部分をわかるのは、ただ一人の人なのだと思う。その人が誰かは知らない。かけた部分が、ピタリと合わさるように、その人と私は引き合わせられるはずな…

悼む

もうそこにいない、あなたに話しかけるように書く。 対象を失った言葉は熱も失い、ようやくと形を保っているだけだから。白昼夢のように、あなたをみた。 駅のホームで、いつもの本屋さんで、散り際の桜の木の下で、池のそばで、紫陽花の近くで、ビル風に吹…

グラスに投げ入れられた氷がオレンジにとけるように

時間がたつにつれて、はっきりわかるようになることがある。 たとえば、あのとき話したことの意味。 あの人はしっかりわかってたんだな、とか。あんな意味で何度も言ってくれたんだったな、とか。夕焼けきれいな場所に偶然つかないなとか。考えてたこと伝わ…

バラバラになってる。言葉が世界が。それは新しいものを生み出すためなのか。ただ崩れ去るためなのか。今の自分にはわからない。ひとつできること。それは記すこと残すこと。青い空に花束を投げる気分だ。

Qへ

言葉の精度を上げて、撃ち抜いてほしい。完膚なきまでに。この世界中のすべてをあなたの声と言葉とロジックで組み立てて見せてほしい。あなたと私の間にあるのはただひとつ。そう言葉なんだから。際まできて。大事な何かを持ち寄って交換しよう。足りないの…

歌うべき声

この世界には実に多くの仕事や、やるべきことがあるものだなと思う。そのなかでも歌うということ。 たいていの人が歌を歌うことできると思う。 うまいとか、下手だとか、別にして。しかし歌を歌うべき人ってそんなにいる訳じゃないと思う。 声が、歌を歌うよ…

血の味

昨日久しぶりに外を走ったら、走り終わったあと、口の中に錆びた鉄の味がして驚いた。乾いた空気で喉の粘膜を痛めてしまったみたいだった。しかしとくに血が出るわけでもないけど、なかなか消えない。初めて喉で感じる血の味はとても新鮮だった。ほんのすこ…

もう決して

もう決して誰のものにもならないように。誰も自分の一部にしたくならないように。固く心に誓っているのに。世界が微笑みかけてくると、ぐらりかたむきそうになる。あなたと私がまざりあうのは本当はとてもこわいこと。わかってるはずなのに。

会いに行く

ただ会いたくて、会いに行く。そんなこれ以上ないくらい、シンプルなこと。ただ会いたいって、恋だなと思う。会って何をするでもどうするでもない。ただ会いたい。一目見て、確認する。何をってわけじゃなく。あなたという人が、今日もここに存在して、世界…

深梅

今日、霜に関連する季語を調べていて、深梅(かんばい)という言葉を知った。 まだ、寒い時期に、咲いている梅を探して深い山に分け入ることを指し示すらしい。分け入った先にあってほしいのは、どうあっても白々とした一重の梅。むめ一輪ほどのあたたかさとい…

秋好中宮

手が届かなかった人というのはいつまでも印象に残る。 源氏物語の中には、秋好む中宮という女性が出てくる。 あの色好みの源氏でも、後見役に徹さざるを得なかった女性。 素敵だなと心から思えても、結果的には距離を縮めることが出来なかった人。 絶対的な…

秋の素晴らしさ

昔は、秋の良さが全然分からなかった。 好きな季節と言えば、春から夏にかけて。 春の夕方のうっとり重たいような芳しい空気。 新緑の目にまぶしいほどの清々しさ。 どれも心をひきつけてやまなかった。 でも最近、秋の空の澄みきった様子に心奪われることが…