浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

幽璃

同じ私は存在しない。鏡の中のように、いくつもいくつも私がいて、追いかけきれない。あなたは私というフィルターの中で幾千幾万と複製されて、数限りなく増えていく。反射を受けてキラキラと輝く、対象に向かって囁きかける星々が、宝石の匂いをばらまく。

迷子になったらなんとしょう。
あなたの腕を貸してはくれないかしら。
一晩したら必ず返しに参りますから。

あやめが咲いている。複製されていくつもいくつも。花首を落としても落としても。きりがないほど。足元が青い海になる。掬われて水浸しになる。誰かが足指をつかんで離さない。爪に青白く塗られた真珠が目当てなんでしょう。

影法師がおいかけっこしてる。おいでおいでと手招きする。ついていったらダメだよと耳元で聞こえる。

私は私。バラバラになっても影も形もなくなっても。鏡の中には複製された私。本当はひとつだけ。