浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

だから僕は本を読む

電話ボックスが煌々と光ってる。
藍色の闇から浮き上がって見える。
受話器の緑。蛍光灯の白。
ここから誰にでも電話をかけられるとしたら誰にかけたいか。
今の自分にはあの人しか、ただあの人しか、思い当たらない。
電話の向こうで黙っていたっていい。
言葉なんかはいらない。
空気を共にできればそれだけで。
ただあの人に、電話をかける方法がわかればいいのに。
受話器にはやたらに蛍光灯がピカピカうつって。