浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

午前0時に霧を見た話

霧渡る街
もの皆すべて柔らかく優しく滲む
もの皆すべて過去の蒼を帯び揺らぐ

どこにいたのだかわからなくなる
探しても探しても君は見つからない
ここで微笑んでいたとして次の瞬間はあちらだ
川の上を柔らかく漂う霧みたいだ

何も言わないでほしい
何も言わないでただ肩に寄りかかって手を握ってほしい

私たちは限りある形を持ち
私たちの命は有限である
でもこうしてここでなら私とあなたは手を握り肩を持たれあい黙して語らず
永遠に降りない車窓に留まることができる
よぎっては後ろに吹き飛ばされる景色
飛んでいくのは月見草 花魁草 あやめの花
永遠に一緒ならいいでしょう
このまま閉じ込められたっていいでしょう
この列車は瑠璃の地に行く
そして永久凍土となる