浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

芝不器男

あなたなる夜雨の葛のあなたかな
白藤や揺りやみしかばうすみどり

夜、入浴中などに、しとしと雨が降ってくると、芝不器男の句がふっと思い出される。向こうの向こうに思い出されるのは故郷なのかあの人の横顔なのかなと思ったりする。

白藤の句は、一昨年、藤園で、満開に咲いた白藤を見たときに、知った句。真っ青な空の下、濃い匂いを振りまくうすみどりの白藤は、羽化する前少年のようだった。

同じく白藤を詠んだ句としては、大串章の、
白藤に王朝の夜のあるごとし
がある。
これはもう少し妖艶。