浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

心葉 ―平安の美を語る― に関して

白畑よしさんと志村ふくみさんの対談をまとめた心葉という本を読んだ。

表題の心葉という言葉を、寡聞にして知らなかったが、この本を通じて、平安貴族の繊細な美の感覚の一端に触れられたように思う。

心葉とは、贈答の際に品物につけた草花や造花のこと。平安の昔、贈答品には季節にあった、心を反映するような草花が添えられていたということである。 日差しや季節や時間まで考慮された微妙な色で染め分けられた料紙は、用途によって選び抜かれ、その人を示す香がたきしめられていたのだろう。そして吟味されつくした歌が、美しく書き付けられていたのだろう。

そこには大切な人と季節を共有したい、今の現在の思いを感覚を分かち合いたい、とでもいうような、繊細な美意識があったと思われる。

もの選びにはその人の感性が強く出る。全てを通じて醸し出されてくるその人らしさ、というもの。

たおやかに美しく、美と戯れ遊ぶ、平安当時は限られた人だけが享受できた世界を、現代の人間は伺い知ることができ、感じることができる。そうであるとするならば、そのような文化はもっと広く世に知られ、大切に受け継いでいかれるべきなのではないか改めて感じた。