浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

私信(と言っても読んでもらえることはない)

あなたが遺したテキストを今ごろになって読んでます。あの頃は、あなたを好きだと言いながら、あなたの文章を真剣に読んではいなかった。そう今は痛感します。あなたが好きな詩を私も好きだということが、ただ嬉しかった。あなたが選ぶ言葉一つ一つが、輝いているように見えて、うっとりとしていたのにすぎませんでした。さて、時が経ち、当時のあなたと同じ年齢に近づきました。そうして、あなたの遺したテキストを読むと、目指していたところ、現実、焦り、ある種のポーズ、背伸び、そういうものが手に取るようにわかる気がする。わかられるのはきっとお嫌でしょうが、直接言えないのだから、許してください。あなたのことが、部分的ではあるが、わかった気がするんです。今しみじみと読んでいると、日本語を愛し、情景を愛し、自分を客観的に見るよう努力していたのが、よくわかる。同時に、フレームに自分を入れ込むことで、ある種の演出をしていたことも、わかります。いくつかのテキストは今も胸に残ります。そこには、悲しいまでに自然を愛して見てるあなたの姿がくっきりと残っているから。あのときはきちんと読んでなくてごめんなさい。理解しないのに、好きでいてごめんなさい。今、あなたのことは、好きでも嫌いでもないてすが、あなたの遺したテキストは、ちゃんと好きです。
あなたが今何を思うのか、それが今私の一番知りたいことです。