夏の暮れ方に佇むものたちはなぜか心細そうだ
老人も買い物帰りのお母さんも犬も
しっかり現実に掴まっていないとそのまま攫われそうだ
薄い桜色と菫色の空をゆっくりと雲が流れていく
路地裏では子供が隠れんぼしている
見つからない子は置いてくよ
淋しがりの子も置いてくよ
橙色の最後の光線を避けながらアスファルトを踏む
どこからか蚊取り線香の匂いがする
いつの間にかこんなところまで来てしまった
随分遠くまで来たものだと思う
あの日なくしてしまったあたしはどこに行ってしまったんだろう
現実なんて曖昧で不確かなものの塊だってことくらい分かっている