浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

廃墟を愛す理由

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廃墟が好きでいくつも見て来た。廃墟の中でも最も切なく悲しいのは、やはりラブホテルだと思う。ラブホテルが廃墟になる姿を見ると、全て物事は浮世の短い一瞬であるとしみじみ思う。生きるということは全く儚いと思う。人を愛しいと思う気持ちも、永遠という概念に対しては無力で、全ては無常である。朽ちていくもの達はただ静かにそこにある。死ぬという事は元の物質に戻るという事で、廃墟は死にながら、生まれ返りつつあるということが素晴らしい。

廃墟はカラーが一番だと思うが、白黒で有るかなきの色に思いを馳せるのもいい。廃墟の写真を眺めながら、在りし日の色とかざわめきを想う。廃墟は鉄錆の赤が美しいと思う。

ただそこにある、ということが奇跡のように感じられる瞬間がある。例えばある日お寺に行ったら小さな仏像が洞穴に安置されている。それを見て、「雨の日も風の日も嵐の夜もずっとここにあったんだな、これからもずっとあるんだな」と思う。自分が辛かろうが幸せだろうが、それはただずっと静かにそこにあるということ。

 

朽ち果て蔦が絡まった観覧車の中に。落書きをされた病院の内部に。そういう「ただそこにある」、ということが潜んでいるように思う。