浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

贅沢な石

贅沢品とは本質的に余分なものだ。あってもなくてもかまわないものだけれど、あると持ち主が幸せになれる。私は無駄なものが好きだ。そこから何も受け取れないものが。

受け取ろうとした瞬間からそれは生産的なものになってしまうから。贅沢品はただそこにあるだけでいいのだ。

 

一番欲しい贅沢品は、水の入っている石。何かの本で読んだのだが、一千年前の水をうちに含んでいる石があるそうである。手に持って揺らせばちゃぷちゃぷと太古の水の音がするだろう。石の色は透明に近い乳白色だといい。

 

そういえば我が家にも石がある。ただ眺め、触れるためだけに存在する石。

手触りはひんやりとしていて、乳白色の部分と淡黄色の水晶のような部分からできている。つるりと手のひらに丁度いい大きさである。月のようにも見えるし、レモンドロップのようにも見える。何となく石に触れたくなると触れて、それ以外の時は全く忘れている。もう何年も手放さずにいる、大切な石である。