浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

月光果樹園

白くて厚ぼったくて柔らかい花がぽかりと咲いた。

夜の闇は冷たくなめらかで、昼の光は暖かく拡散していた

白銀灯の下で待ち合わせをしていたら、ぽたりと落ちた。

ぽたりぽたりと溶け出した月がそこいら中に落ちた。

月と花びらが道路中に拡がった。

花粉で息が詰まるので部屋に帰った。

水の底を柔らかくなぞると銀色の粒が体を包んだ。

一つ一つの銀色には全部私が映っていて、

その私は全て百合の花だった。

粒々は小さくはじけて飛んで、白い渦の中に巻き込まれて消えた。

後には何も残らなかった。

ただ密かな香りだけ