はる
花が薄闇にふうわりと白紫に浮かんでいた。
桜色ではなく、薄闇を映してほのかに水色に。
ひらひらではなく、ぽたり、ぽたり、と首から落ちる花房。
掌に拾いあげてじっと見る。
ぼんぼりが一つまた一つと灯っていく。
青い空に白い月。
つつましく艶やかな花に橙の光。
しいんとしているのでなく、五月蝿いのでなく、人々の声。ざわめき。綿あめを作るぶぅん、という音。
飴菓子かじって花を見た。
古くより花の散るを惜しむ歌は数多く作られている。
散る花だから美しく、愛される。ということ。
今日で最後になるなんて、と思うことが何度あるのだろう。
別れはいつも美しくなってしまうので、嘘の記憶を作っているようで寂しい。
本当はとても美しいものをいつもいつも、見逃しているだけなのかもしれないけれど。
ひりひりした現実に、この花も生きている。