浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

むらさきのまち  

旧友の家を訪ねていったら廃屋になっていた。厳重に釘付けがされていて、見る方もない。庭には真っ青な紫陽花が猛々しくはびこっていて、目に痛かった。 庭で生まれて初めてほんものの沙羅の花を見た。掌に載せると、白い花はひんやりして、しっかりした固さをもっている。夕刻になれば、椿のように首からぽとりと落ちて、無残な姿を晒す。

 

私達は慣れるしかないのだろう。失うことにも得ることにも。