浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

グラスに投げ入れられた氷がオレンジにとけるように

時間がたつにつれて、はっきりわかるようになることがある。
たとえば、あのとき話したことの意味。
あの人はしっかりわかってたんだな、とか。あんな意味で何度も言ってくれたんだったな、とか。夕焼けきれいな場所に偶然つかないなとか。考えてたこと伝わらなくて、がっかりしてたんだなとか。
今になっても完璧遅くて、手遅れで、絶対に取り戻せないの、わかってるのに、だからきれいに見えるのってなんでなんだろう。私の手にもあの人の手にも、誰の手にも届かない、永遠に過ぎ去ってしまったはずの時間が、色づいたように生き返るからなんだろうか。もう誰も、忘れてしまった、そんな時間が、瞬間冷凍のように固まって、朧気な私の記憶の中に存在してる。
できるだけ、正確に思い出したい。その色もその形も、その手触りも、一緒に。