浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

閉ざされた壁の向こう側で

言葉が意味をもつ どこまで世界を理解できるのか 問いかけてくる ありとあらゆる言語で 善を美を真を虚を 叫びかけてくる お前の理解はそこまでかと 問いかけてくる 真に正しい在り方はどのようなものかと 僕は答える 知りうる限りありとあらゆる言語でしか…

薔薇とナイチンゲールとひよどり

力をなくした時、サアディのこの詩を思い浮かべることがある。 「花瓶の薔薇がそなたに何の役に立とうわが薔薇園から一葉を摘みとれ薔薇の生命はわずかに五日か六日わが薔薇園は永遠(とわ)に楽しい ―サアディ「薔薇とナイチンゲールとひよどり」 始めてこ…

シーシュポスの神話

学生時代、教授に読むべきと薦められたものの、他のことにかまけて、放置してしまった一冊。手に取ってみると、シーシュポスの神話自体は、8ページほどの短編だった。 読後の感想。 不条理な世界に対して、自らの意志でもって、「それでよしと」と言い続ける…

ブラームス ピアノ小品 116~119

最近ピアノ曲ばかり聞いている。 グレン・グールドのゴルドベルク変奏曲や、ブラームスのピアノ小品など。 特にブラームスの後期ピアノ小品116が好きでずっと聞いている。 叩きつけるように激情的だったり、深い憂いに沈みこんだり、かと思うと少しユーモラ…

紺の真昼

気がつかないうちに過ぎていてほしいとさえ思うのは贅沢なことなのだろうか 君は濡れた絹の冷たさで私を見ている 気がつかないうちに終わってほしいとさえ思うのは望みすぎなのだろうか 君は磨いだ月のような鮮烈さで私を見ている 今はただ音楽のなかでまど…

芝不器男

あなたなる夜雨の葛のあなたかな 白藤や揺りやみしかばうすみどり夜、入浴中などに、しとしと雨が降ってくると、芝不器男の句がふっと思い出される。向こうの向こうに思い出されるのは故郷なのかあの人の横顔なのかなと思ったりする。白藤の句は、一昨年、藤…

不可避

僕らはたぶん可能性に恋をしてる。 絶望に最も有効であり、明日に命を繋ぐために欠くべからざるもの、それは可能性。

窃視症の見る夢は

その神経質に震える睫毛 あなたの首もとを白々とした剃刀のような衿元を眺めながら その薄い皮膚の下を流れる温かい血のことを想う 骨ばった指の甲が露草の青に染まるところを想像する 腺病質で麗らかな夜にも病みがちな 透けるような花びらの肺を想う 女の…

午前0時に霧を見た話

霧渡る街 もの皆すべて柔らかく優しく滲む もの皆すべて過去の蒼を帯び揺らぐどこにいたのだかわからなくなる 探しても探しても君は見つからない ここで微笑んでいたとして次の瞬間はあちらだ 川の上を柔らかく漂う霧みたいだ何も言わないでほしい 何も言わ…

だから僕は本を読む

電話ボックスが煌々と光ってる。 藍色の闇から浮き上がって見える。 受話器の緑。蛍光灯の白。 ここから誰にでも電話をかけられるとしたら誰にかけたいか。 今の自分にはあの人しか、ただあの人しか、思い当たらない。 電話の向こうで黙っていたっていい。 …