浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

公園の裏手に

松林の間を薄紅色の睫毛が匂う しなやかにしなだれて誘う 夜の時間は自らを去るように幻惑的で 昼の時間は潮騒のように揺らめいている ガラスでできた海月が発光して漂う ここはまるでガラスでできた博物館 どの生命も同等に展示されているのだ まつげに当た…

悔やむ日

君が帰ってきたような気がして窓の外を見る あるのはただ風に吹かれて転がった如雨露だけ 細い枝を鞭のように唸らせて風はただ吹きすぎる その風は萩を揺らし麦を揺らし真白な月を掠め今しがた君のところから吹いてきたばかりのように思える 大空は寒として…

私信(と言っても読んでもらえることはない)

あなたが遺したテキストを今ごろになって読んでます。あの頃は、あなたを好きだと言いながら、あなたの文章を真剣に読んではいなかった。そう今は痛感します。あなたが好きな詩を私も好きだということが、ただ嬉しかった。あなたが選ぶ言葉一つ一つが、輝い…

サカナクション讃歌

ある日、FMから聞いたことあるはずのに、聞いたことない曲が流れてきて、驚いた。その前の週もどこかで聞いたような、それどころか20年くらい前も聞いたことがあるような。正確には、これはシンディーローパー的80年代、と思った。だけど、よくある曲だった…

車窓から

暖炉で静かに燃える石炭のような空と 垂れ込める鬱屈とした鈍色の雲の間を君が行く 西に向かう少年 こうして僕らはすれ違ってしまうのかな パッと燃え上がる新しい薪 新鮮な空気 橙色を映した頬を持つ少年 ゆったりとほら空を飛んでいくよ 君をとどめておく…

今日も知らない街で

遠くにいる知らない人が水を揺らす気配に心を奪われている。 川縁の静かな呼吸。 透明な水は流れ流れ。 白い息とたぶん暗い星空。 欄干に凭れて君は見るだろう自由の空。 僕は遠くからそれを感じる。 どこにいくも何をするも自由の君は憧れ。 僕の代わりに走…

心葉 ―平安の美を語る― に関して

白畑よしさんと志村ふくみさんの対談をまとめた心葉という本を読んだ。表題の心葉という言葉を、寡聞にして知らなかったが、この本を通じて、平安貴族の繊細な美の感覚の一端に触れられたように思う。心葉とは、贈答の際に品物につけた草花や造花のこと。平…