浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

冥府

ひろがるひかりがひかりを呼び
やわらかくひるがえる環を作り
絹のような薄いリボンとなって海に沈みゆく
 
かつてここにあった日々は風にさらされ太陽に傷み騒がしい河原のあおい苔のなかに沈黙した
 
紫から藍へとうつる
なつかしいあなたの香りが漂ってくる
 
それは桜の枯れた夜
乱反射する絶対の白
月の向こうで笑う蜃気楼
 
冷たい手
熱に浮かされた瞳
はじらいがちな横顔
 
ゆったりした点滅は冥府からの合図であり
反響する数多の鈴の音鐘の音は
おわりの薄暮を知らせる声である
 
すずしくかるくとうめいな薄荷水は
たったひとつの恩寵のように静まっている