浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

2016-01-01から1年間の記事一覧

西に行く少年

白い桃みたいな産毛が光って白い歯と日焼けの薄赤い頬 あなたのようすはまるで青竹が含んだ露のようです 明るく照らす北極星がずっとあなたの先をまっすぐに照らしてくれますようにと祈ります

消えてなくなる

明日のはなしばっかりするって言われて、はっとする。今ここにいる自分なんてないみたいに、明日のはなし、昨日のはなし、ずっと昔のはなし、そんなのばっかり、と言われてるみたいで。 今が全てであとはなんもないんだよって、言われた気がして。蛍がすいっ…

瑠璃色の

涙がこぼれて落ちて揺れている 腕を伸ばしてさわれば またあのときみたいに揺れてくれるの 瑠璃色の簪みたいに どうしようもなく息苦しくて それがあなたのせいだって わかればわかるほどいとおしくて また揺れてくれるの 触れば届く距離のあなた

鏡のように反射する乱舞または

スカートの裾ひらり 白い頬のあの子からは死の匂い 笑っているけど笑っていたいけど 重苦しく漂うのは死の匂い 黒髪をかきあげて汗ばんだ季節 赤い金魚が泳ぐように スカートの裾ひらり 頭から離れない 笑顔と泣き顔と 鞄を翻してきびすを返して あのときで…

蓮は白いか薄紅か

地下鉄のいならぶ電車が闇に消えるとき誰でも死んでいくと思う よく見る 今しかないと思ってじっと見る でも過去になって思い出せなくなってその瞬間は消えてしまう 地下鉄の暗闇のなかに古代蓮が浮かんで見える ふわりふわり手をふっているようだ みんなみ…

あくがれいずるたましい

美しすぎれば美しすぎるほど、透明であればあるほど、花の盛りであればあるほど、それを目に留めるのは、一瞬にしておきたい。目の端に現れてすぐに消えて行く幻のようであってほしい。もっと目に焼き付けておきたかったと、しっかり見て、なくさないでいら…

あこがれ

誰でも同じとか、誰でもいいとは、決して思えない。人には、そう言う。誰でも同じとか。でも、私のかけた部分をわかるのは、ただ一人の人なのだと思う。その人が誰かは知らない。かけた部分が、ピタリと合わさるように、その人と私は引き合わせられるはずな…

紺のきつい闇が、白い耳たぶから、染み込んで、はりはりと音をたてる。青いネオンサインが、誘うように揺れている。光の洪水の中に、引力に負けるようにして、引きずり込まれたい。ガラス質の球体のなかで火花が散る。髪を揺らすのは、むらさきのあやめ香水…

幽璃

同じ私は存在しない。鏡の中のように、いくつもいくつも私がいて、追いかけきれない。あなたは私というフィルターの中で幾千幾万と複製されて、数限りなく増えていく。反射を受けてキラキラと輝く、対象に向かって囁きかける星々が、宝石の匂いをばらまく。…

悼む

もうそこにいない、あなたに話しかけるように書く。 対象を失った言葉は熱も失い、ようやくと形を保っているだけだから。白昼夢のように、あなたをみた。 駅のホームで、いつもの本屋さんで、散り際の桜の木の下で、池のそばで、紫陽花の近くで、ビル風に吹…

グラスに投げ入れられた氷がオレンジにとけるように

時間がたつにつれて、はっきりわかるようになることがある。 たとえば、あのとき話したことの意味。 あの人はしっかりわかってたんだな、とか。あんな意味で何度も言ってくれたんだったな、とか。夕焼けきれいな場所に偶然つかないなとか。考えてたこと伝わ…

ルドゥーテ展

ルドゥーテ展に行ってきた。 自然を丁寧に観察して素晴らしい絵を描いた人という印象を持っていた。でも、今回初めて知ったのは、作品は銅版画に着色という形をとっていたこと。 絵画だとばかり思ってたが、それはほんの数点で、版画がほとんどだった。分業…

バラバラになってる。言葉が世界が。それは新しいものを生み出すためなのか。ただ崩れ去るためなのか。今の自分にはわからない。ひとつできること。それは記すこと残すこと。青い空に花束を投げる気分だ。

Qへ

言葉の精度を上げて、撃ち抜いてほしい。完膚なきまでに。この世界中のすべてをあなたの声と言葉とロジックで組み立てて見せてほしい。あなたと私の間にあるのはただひとつ。そう言葉なんだから。際まできて。大事な何かを持ち寄って交換しよう。足りないの…

歌うべき声

この世界には実に多くの仕事や、やるべきことがあるものだなと思う。そのなかでも歌うということ。 たいていの人が歌を歌うことできると思う。 うまいとか、下手だとか、別にして。しかし歌を歌うべき人ってそんなにいる訳じゃないと思う。 声が、歌を歌うよ…

綺堂むかし語り

今、岡本綺堂のむかし語りというのを読んでる。県立図書館が、蔵書を見せてくれるようになったので、足を運んだ時に、偶然見つけた。 明治10~30年頃のことが、鮮やかによみがえる感じがする。世の中はもっと大らかだったろうし、もっと刹那的だったんだろう…