薔薇とナイチンゲールとひよどり
力をなくした時、サアディのこの詩を思い浮かべることがある。
「花瓶の薔薇がそなたに何の役に立とう
わが薔薇園から一葉を摘みとれ
薔薇の生命はわずかに五日か六日
わが薔薇園は永遠(とわ)に楽しい
―サアディ「薔薇とナイチンゲールとひよどり」
始めてこの詩を読んだ時、本当の豊かさとはこういうことかと感じた。
そして、永遠に楽しいではなく、永遠に美しいと、誤読した。
美しい薔薇園を心の内に持つ人は、一葉摘み取られたくらいでは、なんでもない。
それはしっかりと根を張り、美しい緑の葉を持ち、蕾を満々とつけているのだから。
そして季節が巡ってもまた同じように蕾をつけ、芳香を漂わせる、美しい花を降らせる。
薔薇の命は短くとも、薔薇園は永遠なのである。