浮世離

水面に浮上してほんのつかの間の息継ぎ。心象風景がほとんど。

あこがれ

誰でも同じとか、誰でもいいとは、決して思えない。人には、そう言う。誰でも同じとか。でも、私のかけた部分をわかるのは、ただ一人の人なのだと思う。その人が誰かは知らない。かけた部分が、ピタリと合わさるように、その人と私は引き合わせられるはずな…

紺のきつい闇が、白い耳たぶから、染み込んで、はりはりと音をたてる。青いネオンサインが、誘うように揺れている。光の洪水の中に、引力に負けるようにして、引きずり込まれたい。ガラス質の球体のなかで火花が散る。髪を揺らすのは、むらさきのあやめ香水…

幽璃

同じ私は存在しない。鏡の中のように、いくつもいくつも私がいて、追いかけきれない。あなたは私というフィルターの中で幾千幾万と複製されて、数限りなく増えていく。反射を受けてキラキラと輝く、対象に向かって囁きかける星々が、宝石の匂いをばらまく。…

悼む

もうそこにいない、あなたに話しかけるように書く。 対象を失った言葉は熱も失い、ようやくと形を保っているだけだから。白昼夢のように、あなたをみた。 駅のホームで、いつもの本屋さんで、散り際の桜の木の下で、池のそばで、紫陽花の近くで、ビル風に吹…

グラスに投げ入れられた氷がオレンジにとけるように

時間がたつにつれて、はっきりわかるようになることがある。 たとえば、あのとき話したことの意味。 あの人はしっかりわかってたんだな、とか。あんな意味で何度も言ってくれたんだったな、とか。夕焼けきれいな場所に偶然つかないなとか。考えてたこと伝わ…

ルドゥーテ展

ルドゥーテ展に行ってきた。 自然を丁寧に観察して素晴らしい絵を描いた人という印象を持っていた。でも、今回初めて知ったのは、作品は銅版画に着色という形をとっていたこと。 絵画だとばかり思ってたが、それはほんの数点で、版画がほとんどだった。分業…

バラバラになってる。言葉が世界が。それは新しいものを生み出すためなのか。ただ崩れ去るためなのか。今の自分にはわからない。ひとつできること。それは記すこと残すこと。青い空に花束を投げる気分だ。

Qへ

言葉の精度を上げて、撃ち抜いてほしい。完膚なきまでに。この世界中のすべてをあなたの声と言葉とロジックで組み立てて見せてほしい。あなたと私の間にあるのはただひとつ。そう言葉なんだから。際まできて。大事な何かを持ち寄って交換しよう。足りないの…

歌うべき声

この世界には実に多くの仕事や、やるべきことがあるものだなと思う。そのなかでも歌うということ。 たいていの人が歌を歌うことできると思う。 うまいとか、下手だとか、別にして。しかし歌を歌うべき人ってそんなにいる訳じゃないと思う。 声が、歌を歌うよ…

綺堂むかし語り

今、岡本綺堂のむかし語りというのを読んでる。県立図書館が、蔵書を見せてくれるようになったので、足を運んだ時に、偶然見つけた。 明治10~30年頃のことが、鮮やかによみがえる感じがする。世の中はもっと大らかだったろうし、もっと刹那的だったんだろう…

低吟して

作家や文人の裏話的なものがすごく好き。最近はネットで瞬時にいろんな人の情報に触れることができるから、本当に感謝の気持ちしかない。中原中也について、調べていたら、壇一雄氏の「小説太宰治」の中に、雪の中、太宰に会いに行くという中也について書か…

澁澤龍彦全集21私のプリニウス読了

プリニウスを読んでから、澁澤龍彦の「私のプリニウス」をまだ読んでなかったことを思い出して、手に取った。プリニウスの知ったことをなんでも書き留めておこうとする好奇心の強さ、とりあえず見たこと聞いたことはなんでも大切にして、その精神と熱量には…

川端康成随筆集

川端康成随筆集を読んだ。きっかけは、ドナルド・キーン氏の特集で、「美しい日本の私」に関する言及があったから。 美しい日本の私については、言うべくもなく、日本の美について、万葉集から茶道や石庭に至るまで、その根底に通じている美というものに対す…

萩原朔太記念館訪問

萩原朔太郎のことは、あまりよく知らなかった。教科書に載っている竹という詩しか読んだことがなかった。最近、帰郷という詩を読んで、その成り立ちを知ってから、興味を持つようになった。この詩を読むと、故郷に帰らざるを得なかった詩人の悔しい気持ちが…

三四郎 読了

読売歌壇を読んでいたら、三四郎を扱った作品が掲載されてたので、いい機会だと思い読んでみた。本が手元になかったので、青空文庫で気楽に読んでみた。三四郎は熊本から上京きたばかりの大学生。明治が舞台だけど、人の心は今と変わらずなんだなと思い、す…

血の味

昨日久しぶりに外を走ったら、走り終わったあと、口の中に錆びた鉄の味がして驚いた。乾いた空気で喉の粘膜を痛めてしまったみたいだった。しかしとくに血が出るわけでもないけど、なかなか消えない。初めて喉で感じる血の味はとても新鮮だった。ほんのすこ…

プリニウス 1~3巻

プリニウス (1) (バンチコミックス45プレミアム) 作者: ヤマザキマリ,とり・みき 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/07/09 メディア: コミック この商品を含むブログ (23件) を見る プリニウス、1~3巻読みました。 プリニウスのように、博覧強記、いつ…

惡の華 読了

惡の華 コミック 全11巻完結セット (少年マガジンコミックス)作者: 押見修造出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/06/01メディア: コミックこの商品を含むブログを見る押見修造さんの惡の華を読み終わった。 数年前、この作品がとっても好きで、一時期はどっ…

もう決して

もう決して誰のものにもならないように。誰も自分の一部にしたくならないように。固く心に誓っているのに。世界が微笑みかけてくると、ぐらりかたむきそうになる。あなたと私がまざりあうのは本当はとてもこわいこと。わかってるはずなのに。

会いに行く

ただ会いたくて、会いに行く。そんなこれ以上ないくらい、シンプルなこと。ただ会いたいって、恋だなと思う。会って何をするでもどうするでもない。ただ会いたい。一目見て、確認する。何をってわけじゃなく。あなたという人が、今日もここに存在して、世界…

深梅

今日、霜に関連する季語を調べていて、深梅(かんばい)という言葉を知った。 まだ、寒い時期に、咲いている梅を探して深い山に分け入ることを指し示すらしい。分け入った先にあってほしいのは、どうあっても白々とした一重の梅。むめ一輪ほどのあたたかさとい…

秋好中宮

手が届かなかった人というのはいつまでも印象に残る。 源氏物語の中には、秋好む中宮という女性が出てくる。 あの色好みの源氏でも、後見役に徹さざるを得なかった女性。 素敵だなと心から思えても、結果的には距離を縮めることが出来なかった人。 絶対的な…

秋の素晴らしさ

昔は、秋の良さが全然分からなかった。 好きな季節と言えば、春から夏にかけて。 春の夕方のうっとり重たいような芳しい空気。 新緑の目にまぶしいほどの清々しさ。 どれも心をひきつけてやまなかった。 でも最近、秋の空の澄みきった様子に心奪われることが…